あるお店(外食産業)の店員さんのお話(ご本人にOKをいただきました)。
「いらっしゃいませ」から「お茶出し」、「ご注文、お決まりですか?」、「配膳」、そして「会計」までをこなしている。
時には、客席から店員を呼ぶ呼び鈴がひっきりなしに鳴っていて、店内を所狭しと、静かに小走り動いていらっしゃる。
1~2ヵ月1回くらいでしたが、かれこれ1年くらい通っていて、ある時、意を決して話しかけてみた。
『お忙しいですね。』っと。
そしたら。。。「私、いろいろ事情(月~金連日勤務に加えて、OPEN~CLOSE勤務も度々で、気が付いたら、あまりに仕事漬けな状態になってしまって)があって、来週半ばで辞めることにしたのです。幼い子供がおり、パートをはじめた当初はこんなに仕事をする予定ではなかったのですが、人員不足で、クローズまで一人でこなしていました。」という衝撃的な言葉が返ってきた。そして、「いつもご利用を頂いていたので、次回いらしたときには『やめること』を言おうと思っていました。」とおっしゃった。
正直、びっくりしてしまった。
その店員さんの勤務最後の日、再びお店に行ったら。
「こんばんわ!!いらっしゃいませ(明るい声)。」
最後の日も、一人で、CLOSE(レジ締め ⇒ 店の鍵を締め ⇒ 深夜の帰宅)をして勤務終了らしい。。。
なんというか、頭がさがりました。
その方曰く、
辞めるという話をしたところ、本社の本部の方々がお店にまで来て「やめてもらっては困る。。。」という話が延々とあったらしい。
1パートさんなのかもしれないけれど、されどされどお店を支える大きな一人だったのではないか。
今頃になって、本部は焦ったのではないか。そして、スタッフの安全面を軽んじていたのではないかと感じた。なぜならば、そのパートさんは女性だからです。
もう少しパートさんの話も前からちゃんと聞いて、お互いに話をしていたらコミュニケーションをとっていたら、深夜に一人でお店を閉めさせるなんて危険なことをさせなかったら、お互いにとってこんな事(企業は困る。パートさんは辞めたい。)にはならなかったのではないか。と誠に勝手ながら思った。
その時、
一緒にご飯を食べにいった方が、ポツリと言った。
『企業は人なり。』と。
その口調は静かだったが、私には、事の真実をとらえた深い言葉だった。
たしかに、そうなんだ!!
ロケーションや便利さ、価格やメニューの好みもあるでしょうが、「頑張って働いているあの店員さん、今日はいるかな??」と、それが楽しみの一つだったのかもしれない。そして、私達だけでなく、ほかのお客さんも、そうだったのかもしれないと感じた。
しかしながら、企業経営においては、人がいなくなったら、補充するだけのことなのかもしれません。ただそれは「他のスタッフは辞めないだろう。」という前提があってのこと。もし、他のスタッフも大勢が辞めると言い出したら、それでもドライに人の補充の繰り返しでいられるのだろうか。
一方で、外食産業の勤務体系などがしばしば紙面を賑わす昨今、従業員である権利ばかり主張し管理職になりたいと言いながら責任(特に困ったこと)がのしかかるとスグに逃げるスタッフ、管理者だからと権力ばかりを振るい口を出しても手を出さない(=「手助けする心の無い」の意)命令することこそが仕事だと言わんばかりの上司、事業活動はきれいごとではなく様々な状況がそうさせているのでしょうが、なんのために働いているのだろうかと思ってしまう。事業活動の根本は、お金を得るための活動が第一で、全てはそれに基づく戦略ではなかったのか。
今回のパートさんとのお話で感じたのは、一生懸命働いていると(大変なこともたくさんあるけれど)、人から(企業から)必要とされる存在になるのだなぁ。ということでした。
ところで、
弊社はキャリアカウンセリングをしているため、よくこんなことを耳にします。
「条件に合う求人がない。」
「勤務場所が△△では。。。」
「給与が○○では、前職から下がる。」などなど、
たしかに、本当に、重要なことです。そして、条件に合わない求人にトライした方が良い、という意味では決してありません。
しかし、キャリアカウンセラーとして、時々思うことがあります。
「全ての条件が初めからそろっている職場なんて、めったにない。むしろ無いと思った方がいい。大切なのは、会社であれば上司に認められることを含め、動かすべき人を動かし、力を借り力を合わせ、自身の希望を少しずつ手繰り寄せていくものなのではないか。そのために戦略を練り、作戦を立て、実践改良を繰り返し、目的を達成しようとする力こそが、今必要とされているのではないか。」と。
最近、順番を逆にとらえている人が多い気がする。
・・・お店を出るときに・・ふっと、
もし、あの方が、また働こうとした時は、「きっとすぐに次の職場がみつかる」だろうなぁ…と。
キャリアカウンセラーの直感のようなものを感じた。